水なき川のほとりにて − 吉田嘉七 ビルマ戦詩集より

ビルマ戦詩集 自昭和十九年一月 至昭和二十年一月 吉田嘉七

水なき川のほとりにて − 吉田嘉七

嘱目の草枯れ枯れて

日は真昼、野のはたて

靴重く辿りしに

ことごとく水涸れし川

掬ふべきうたかたも無く   すくふべき

波ならぬ熱砂の起伏

岸辺には茨おどろに

花咲かず、鳥飛ばず

もののかげかわきはてたり

ものなべてうつろのごとし

日は真昼、川に水なく

わが死なむ道遠からず

<メークテーラー附近にて>

〈136〜136頁)